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還暦の変人雑記帳

横山秀夫の短編『逆転の夏』読後感想

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横山秀夫 短編集『動機』文春文庫

(ネタバレあり注意)

横山秀夫の短編集『動機』から『ネタ元』『逆転の夏』を読む。

横山秀夫は、『64-ロクヨン』を観て、ミステリーでありながら人間洞察の深さに感銘を受け、「本を読んでみよう」と思いAmazonで中古を買ったもの。

2篇を読んで思ったこと。
横山の作品は、ミステリーとしてのストーリー展開の面白さでグイグイ読めて、読後は人間に対する洞察力の深さで満足感を得られるので、いわばエンタメなのに文学作品を手軽に読めるというお得感があり、文学性の質も硬派で希少性がある、という感じ。

昨夜読んだ『逆転の夏』は特にそうした特徴が顕著だ。(この作品は、だいぶ昔に佐藤浩一主演でテレビドラマ化されているようだが、多分ドラマだと人間の心の綾などは描ききれていないのでは?と思わされる。活字の方がそうした機微を行間で醸し出しやすい気がする)

『逆転の夏』は、それぞれの登場人物の愛と憎悪。生き方。考え方。許されざる者への報復と自分を超えて生きる自己の転換の刹那。それぞれの愛と自己執着が、終盤の逆転劇のクライマックスに向けて淡々と描かれる(しかし、過去に殺人を犯した主人公への謎の殺人依頼とかき乱されていく主人公の変化が緻密に描かれ飽きずに読める)

1から27までの全体のうち、殺す側と殺される側が逆転する22までは山本の内面からストーリーを展開していく。そして逆転の後は、串間と及川の視点へ移動し、真実が明かされる。それぞれの心の真実とともに。読後の清涼感は、計画実行後の登場人物の心の変化が僅かな変化であっても成長する方向に描かれていることによる。