ZENガーデン-Z

還暦の変人雑記帳

『空飛ぶタイヤ』

 U-NEXTで『空飛ぶタイヤ』(2009年仲村トオル主演のWOWOWの連続TVドラマWで放映されたもの)全5話を観る。赤松運送社長役の仲村トオルの熱い演技と対照的なホープ自動車常務役の國村隼のクールな演技と脇を固める俳優陣の演技力の高さのバランス、ストーリー展開の流れのよさで、心地よく中弛みせず観れた。

 このドラマを興味深く観れた理由の一つは自分が、田舎町の地区公民館という機関(組織)が腐敗しているのにその上部組織の行政の人間は手をつけられない、という奇妙な現実を味合わされたこともある。

 ホープ自動車販売部カスタマー戦略課長の沢田が、妻に「組織の悪事を知った時、その組織を守るために目を瞑るか、それとも告発するか?」という問いに、「その告発は客の利益になるの?」と問い、「なるんだったらやるべき」と答えていたシーンには考えさせられた。
 住民のなんの利益にもならない名ばかりの形骸化し、腐敗しきった〈住民の代表による協議会〉など税金の無駄遣いでしかない。というか存在意義はどこにあるのか?

 組織の倫理に従うか、それとも組織人以前の人間としての倫理に従うか。
 役場の人間も役所という組織の人間である以前に〈生身の人間〉である筈だが、役所という機関は、〈生身の人間〉であることを許さないところなのだろうか?と疑問を持たざる得ないような異様な側面がある。
 役所の対応というのは、一般の人間の理解を超えている。自由主義国家の中にある社会主義エリアのような印象。


財閥系の自動車会社の歪んだ「エリート意識」の末路と行政の下部組織の腐敗の相似性

実はホープ自動車には3年前に不具合が生じながら監督官庁への報告を怠り、さらに販売店を通じてヤミ改修を続けていた“リコール隠し”の過去があった。

不正は内部告発で暴かれ、白日の下に晒され、財閥系の名門自動車会社のブランドが地に堕ちたのだ。

 民間企業なら内部告発があり得るが、行政機関にはそれはない。あり得ない。
それが、闇を深くし、病巣を放置するしか対処のしようのない末期的状態を常態化している。ゆっくりと沈んでいく船の中で、対処法もなく、どうしようもないから気づかないふりをし続ける、だけなのだ。

 

見当違いなプライドと慢心

 

 傲岸不遜な"中華”思想

 

 「消費者心理からかけ離れた企業体質を持つこの会社に、果たして世の中で生き残っていくだけの価値があるのか」

 

 「迷惑しているのは世の中の方だ」

 

 三菱自動車は燃費データの偽装発覚後の2016年5月12日、ライバルの日産自動車による2300億円超の出資を受け入れ、事実上、その傘下に入ることが発表された。

三菱自動車の管理部門の幹部が苦渋の表情で言う。 「小説では社内にT会議という秘密会議が設けられ、そこでリコール隠蔽工作が謀られています。

今回のうちの事件でも開発や製造といった生産の重要なセクションは、自分のところだけですべて話を収めていました。リコール隠しの原点はまったく同じです。

改革は口ばかりで、もっとも大事なことは隠蔽したまま、まったく手が付けられていなかったということです。

自分たちは別格だとグループ内しか見ずに、都合の悪いことは隠蔽する体質はそのままに、そこから抜け切らせることが出来なかったのが今回の事件の元凶だと思います」

 

 三菱自動車の軽自動車の生産拠点水島製作所の下請け会社の社長がこう怒りを表す。

「『いくらでも作っていい、頼むから助けてくれ』と言われて新しい機械を導入し下請けに入りました。しかし、これまでもいきなり仕事が引き上げられることは度々でした。 大きな赤字を抱えたため、本社の担当者に相談に行きましたが会ってもくれません。
やっと30分の約束で会っても『うちとは関係がない』と話にも乗ってくれません。
リコール隠しの後、コンプライアンスの徹底と企業風土改革を推進するCSR推進本部を新設し、三菱自動車のどこの支社・関連会社に行っても社内には“誠意を持って対応し、お客さんに満足度を得られるように。協力会社にも同様に”などと書かれたペーパーが張ってありました。
しかし、噓ばっかり言うなよと言いたい。三菱自動車の企業体質は、『空飛ぶタイヤ』そのまま、すべて小説の通りになってるじゃないですか」
最後に、著者の池井戸氏はこう述べている。 「反省もなければ、後悔もない。あるのはただ、歪んだエリート意識のみ。かくして、人を殺し、客を騙す――これほどまで、怒りに駆られて書いた小説はない。迷惑しているのは、世の中の方だ」

 

 

 

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