少数者と武士道

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神田伯山の『畔倉重四郎』を聴いて

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 講談師、神田伯山。真打昇進、襲名前の名は、神田松之丞(まつのじょう)である。

 私は、NHKの時代劇、『鳴門秘帖』のナレーションの講談を松之丞が演っているのをみて「かっこいい」と思って気にしていたのだが、同じくNHKのファミリーヒスストリーで松之丞の生い立ちなどを知り、さらに興味が増していた所に・・・

 

 先日、Yotubeで、神田伯山ティービーというのを発見し、『畔倉重四郎』連続公演(全19話)の全てをCMなしで視聴することができた。(無料公開という太っ腹はいかなる所以か知らねども、ありがたし)3日ほどで観終えた。圧巻だった。

 松之丞(伯山)の講談は、江戸文化の芸術である講談を、現代的なアートに昇華した素晴らしい語りだった。全身全霊で演じるとはこのことか。ロック・アーティストのライブを観てるような感じでもある。

 

 講談界の三政談の一つ『畔倉重四郎』(越前の首)は、作者不詳の江戸文学の大作

名奉行、大岡越前守が生涯裁いた中で「八つ裂きにしてあまりある」と言わしめたのが、徳川天一坊、村井長庵、そして畔倉重四郎。

 

あらすじは、↓

ameblo.jp

 

 文学作品としての『重み』のあるこの作品は、ゲーテの『ファスト』に匹敵する名作である。表層的には、悪漢、畔倉重四郎という惡の華のダークな世界を主体に描いているのだが、伏線の配置、最後のどんでん返しの仕掛け、など『物語』としての完成度が凄く、講談作品ではなく、小説として書かれていたなら、世界に冠たる文学として認められていたことだろう…と思える完成度の物語である。

 

 

私なりに、この作品の主題を考えて閃いたのは「悪とは何か?」ということだ。(ゲーテのファウストは、悪魔に魂を売った(取り引きした)ファウスト博士の物語であるが、クライマックス部分で知識人の魂の救済のテーマが絡むことで文学的名作、魂の物語となっている)

 

 人はどのようにして悪の道に入り込んでいくのか?

 そして、どのように悪へとのめり込んでいくのか?

 挙げ句の果てに、生身の人間が、どのように、人の皮を被った〈悪霊(悪魔)〉と化してしまうか?

 

 悪党が悪党たる所以…嘘八百、偽善の仮面、自己陶酔的世界観、自己弁護・・・・物語の後半での裁きの中で、そうした重四郎の内面性、性質が余すところなく描かれる。

 

 最後のどんでん返しの後に、重四郎が大岡越前らの前で本心の吐露する呪詛の言葉は、悪魔的世界観であるが、現代の利己主義的世界観とそっくりである。(つまり、近代人は悪の道への誘惑を断ち切り難い世界観に囚われている、のかもしれない…という一抹の思いが頭をかすめるのだが)

 

「奇妙院の悪事(上)」(16話目)と「奇妙院の悪事(下)」(17話目)は、伯山自身が、「この二つは、本編と関係のない余計な挿入で、さして面白くはないのですが…」と言っているのだが、「悪とは何か?」をテーマに描いた物語と理解すると、奇妙院という小悪党の姿を描いた作者の意図はわかる気がする。

 

 奇妙院は、畔倉重四郎が、牢破りをするために「利用した」男だが、心霊詐欺などして捕まった小悪党である。しかし、重四郎は奇妙院の金銭欲を見透かし、その欲を利用する。

 政治で例えるなら、 

奇妙院という金銭欲の強い小悪党=与党親中政治家(or利権に目の眩んだ政治家・官僚)

畔倉重四郎という「人としての道」を無価値なものと無視し欲望のままに大量殺人を繰り返すことを屁とも思わぬ大悪党=共産主義者、売国左翼

 って感じか、と思った次第。

 器の大きさ、小ささの違いで、小悪党であろうが、大悪党であろうが、悪の道に落ちれば(悔い改めない限り)蟻地獄やブラックホールのような同じ穴に吸い込まれていく。

 悪事は隠せるが、世界観は隠せない。(毛沢東やスターリン、ポルポトが歴史上、どれだけ多くの仲間や自国民を殺戮したか。彼らが、共産主義イデオロギー信奉者であったことは偶然ではない)

 この物語は、重四郎と兄弟分の三五郎はじめ、様々な悪人を描いていると同時に、盲人の城富やおふみという善人や大岡越前という徳の高い人間も描き、対決させている。

 

 伯山の、時に畳み掛けるようなリズムと間の取りかた、静かなどっしりとした語りなど多彩な表現力は、物語世界に引き込み、長丁場の物語を一気に聴かせる。

 最後の大岡の言葉の余韻の中で、聞き手は物語世界から反転して、自分のたましいの省察に向かう。(かもしれない)

 

(ちなみに、私はこれまで講談など聴いたこともないので、神田伯山という人を講談師として客観的に評価できないのだが、現代的なセンス、熱量の大きさなどアーティストとして一つの境地を拓いていると感じるので、今後も注視したいと思っている。また、江戸文化の理解にも役立ちそうである。現在、大変な人気だそうで、youtubeのコメントも好意的で多くの人が古典芸能に目を向ける契機となっていることも興味深い)

 

 

www.owlspot.jp

 

[伯山ティービィー]全19席配信中
「悪事の馴れ初め」(1話目)はこちらから
「穀屋平兵衛殺害の事」(2話目)はこちらから
「城富歎訴」(3話目)はこちらから
「越前の首」(4話目)はこちらから
「金兵衛殺し」(5話目)はこちらから
「栗橋の焼き場殺し」(6話目)はこちらから
「大黒屋婿入り」(7話目)はこちらから 
「三五郎の再会」(8話目)はこちらから 
「三五郎殺し」(9話目)はこちらから
「おふみの告白」(10話目)はこちらから
「城富奉行所乗り込み」(11話目)はこちらから
「重四郎召し捕り」(12話目)はこちらから
「おふみ重四郎白洲の対決」(13話目)はこちらから
「白石の働き」(14話目)はこちらから
「奇妙院登場」(15話目)はこちらから
「奇妙院の悪事(上)」(16話目)はこちらから
「奇妙院の悪事(下)」(17話目)はこちらから
「牢屋敷炎上」(18話目)はこちらから
                            「重四郎服罪」(19話目)Aはこちらから
「重四郎服罪」(19話目)Bはこちらから
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